溺愛ドクターは恋情を止められない

「都、俺……」


彼の肩に頭を預けると、大きな手が私の髪を梳く。
以前、海で一緒に見たときと同じオレンジ色の夕焼けが、私達の頬を照らした。


「やっぱり救えない命もあった」

「……うん」


彼の留学先は、心臓血管外科専門の病院。
全米どころか、全世界から難しい症例が集まると聞いている。

そのため、日本ではなかなかない心臓移植のオペにも立ち会えたとか。

もともとリスクの高い患者が集まるのだから、どれだけ手を尽くしても救えない命があっただろう。


「だけど、前よりはずっと、救える命が増えているはずだ」


野上で勤務していた頃とは比べものにならないほど、彼は自信で満ち溢れている。
それはきっと、ひたすら努力を重ねてきた証。

今の彼なら、他のドクターでは救えない命ですら、救ってくれる気がする。
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