溺愛ドクターは恋情を止められない

「それでも、きっとへこたれる。人の命は、それくらい重い」


わかってる。
短い間だったとはいえ、彼と一緒に働いて、命の尊さをまざまざと見せつけられた。


「だから、都は隣にいて、俺を叱ってくれないか」


叱ったりできない。
彼が手を抜くことなんてないから。

だけど……。


「奏多さんの苦しみは、私の苦しみ。ふたりなら、乗り越えられます」


初めて処置室で少女が亡くなったあの時、彼は私を抱きしめ『泣けばいい』と言ってくれた。

彼が泣きたいほど辛いときは、私がそばに寄り添い、私が泣きたい時には、彼の胸を借りよう。

人はひとりでは生きられない。
支え合って、困難を乗り越えればいい。


「そう、だな」


彼の吐息が頬にかかると、私は目を閉じた。

久しぶりに感じる彼の唇の温もりは、すぐに私を夢中にさせる。
だけど……。
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