溺愛ドクターは恋情を止められない

涙目になりながら彼を見上げると、彼は傷に触れていた私の手を握った。


「都がこの傷を褒めてくれたから、自信が持てた」


ずっとコンプレックスだったという無数の傷跡は、彼を苦しめたかもしれない。
だけど私はやっぱり、この傷に感謝したい。
彼の命をつなぎとめてくれたのだから。


「奏多さん……。私……」


私も彼から新しい未来をもらった。


「あなたに出会えて、本当によかった」


ニッコリ笑ってみせたのに、目尻から透明の液体が一粒こぼれていく。


彼が以前言ったように、天の川を渡るのは簡単ではなかった。
二年という長い月日は、本当は苦しくてたまらなかった。

だけど、もう離れない。


彼は私の左手をとり、薬指の指輪に唇を寄せる。
< 411 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop