溺愛ドクターは恋情を止められない
野上総合の救急は、よくテレビでよく見るような救急とは少し違う。
基本的に研修医が診て、手に負えなければ専門の先生に引き継ぐのが役割だった。
つまり、トリアージ的な役割を担っている。
『救急車入ります』
その一言で皆が一斉に動き出す。
どんなに和やかな雰囲気だったとしても、その瞬間にキリリとした空気が走る。
それがプロという事なのだと、ここに配属されて知った。
私達受付は、救急隊員の電話をとり、ドクターに引き継ぐ。
ドクターが症状を聞いて、受け入れが決まると、再び電話を代わってもらって、患者の名前、生年月日などを聞いて、カルテを作る。
その間、一秒たりとも無駄にできない。
配属当初は、緊張しすぎてめまいを起こしそうなほどだったけど、他の人は余裕そうに見えた。