溺愛ドクターは恋情を止められない
「だよねー。他の先生たちがこぞって狙ってるよ」
カルテチェックを続ける内藤さんは、時々私の話に相槌を打つ。
「わかる気がします」
女の目から見ても、魅力的な人だと思う。
「ここだけの話、高原先生の彼女っていう噂があるんだよね」
高原先生の彼女?
「いつも仲良さそうに話してるし、美男美女でお似合いじゃない」
内藤さんの言葉に、なぜだか胸が締め付けられる。
高原先生の隣を歩く酒井先生が頭に浮かぶ。
どう考えたって絵になるふたり。
恋人同士だと言われても、うなずける。
でも、なんとなく気分が沈むのは、どうしてだろう。
酒井先生の仕事ぶりは完璧だった。
緊急性の高くない患者には、諭すように救急車の意味を話していたし、緊急性の高い症状でもそつなくこなし、専門外の処置も見事だった。