溺愛ドクターは恋情を止められない
「松浦さん、ID作って。名前も生年月日もまだわからないから、空白で」
中川さんが叫ぶ。
道端で倒れたというケースも多々あり、免許証のような身分証明書を持っていなければ、名前すらわからないことも多い。
だけど、名前はわからなくても、検査にID番号が必要なのだ。
それをもとに、全科で電子カルテが閲覧できるようになる。
それは、スムーズに診察を進めるためには、大切なものだった。
今日はいつもより救急車が多い。
いつもは、朝、初めて会う研修医の先生やナースに挨拶するのだけれど、私が仕事を開始した時点で、そんな余裕がないほどだった。
夜勤専門の男の人から、引き継ぎを受ける。
その間も、ひっきりなしに電話が鳴って、誰かが対応に走るという感じ。