溺愛ドクターは恋情を止められない
私達資格のないものが、こうした処置に係わることは許されないとわかっていたけれど、今にも逃げだしそうな子を必死になだめている先生を放っておけない。
ナースが普段やるように、ピンセットに消毒のついた綿を挟んで、先生の手に握らせた。
消毒は当たりだったみたい。
高原先生はこちらを振り向くことなく、処置を続けている。
「ガーゼ」
えぇっ? どの?
私をナースだと勘違いしている先生は、「よく我慢できたね」と子供を褒めながら、指示を出してくる。
でも、ガーゼはいくつもの種類がある。
どれを出したらいいのかまではわからない。
なかなか差し出さない私に痺れを切らせた先生は、やっと振り返った。
「あ……」
私の姿を確認した先生は、目を丸くして驚いている。