溺愛ドクターは恋情を止められない

だけどすぐに「そこの右側の取ってくれる?」と指示がきた。


「は、はい」


先生の指示でどのガーゼかわかった私は、再びピンセットにはさんでガーゼを差し出した。


「ありがと。助かった」


だけど……消毒の処置が終わっても、激しくしゃくりあげる子供の泣き声は一向に止む気配がない。

きっと不安なんだ。
痛いわけじゃない……。

そう感じた私は、男の子の治療されてないほうの手をそっと握った。


「大丈夫だよ。この先生は上手なんだよ。君の手も、すぐ治してくれるよ」


そうやってニッコリ笑って見せると、さっきまでの泣き声はどこにいったのかピタリと止んだ。


「すみませんでした」


そこへ、下の子を連れているお母さんが駆け込んできた。
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