溺愛ドクターは恋情を止められない
「松浦に心配されるなんて、俺も落ちぶれたな」
「それは、失礼ですね」
憎まれ口を叩いているのに、目はうつろなままだった。
「オペ、成功されたんですね。おめでとうございます。でも、先生の体が心配です」
いつの間にか、持っていたメモをギュッと握りしめていた。
あの時、先生が私を救ってくれたように、私も先生を元気づけたい。
「ありがとう。大丈夫だよ」
「でも……」
口を開いてから後悔した。
“大丈夫”には見えなかったけれど、彼がそう言うなら、これ以上踏み込んではいけない気がしたから。
だけど……。
「今日のオペは、さほど難しいものではなかった。なのに、オペが終わるといつも頭が真っ白になっちまう」
高原先生は天井を見上げて大きな溜息をついた。