溺愛ドクターは恋情を止められない
「松浦、ありがと。焦っても仕方ないのはわかってるけど、小柴先生があまりにすごすぎて……」
「でも、小柴部長も、突然オペができるようになったわけじゃないと思います」
「それもそうだ」
今や“神の手”を持つ部長も、研修医だった時期を乗り越えてきているのだから、焦る必要はない。
「松浦」
「はい」
高原先生は前に立つ私を手招きして、隣に座るように促してきた。
「三分、時間ある?」
「三分、くらいなら……」
なんだろうと思っていると……。
「ちょっと貸してくれ」
「はっ? えっ!?」
彼は突然私の膝に頭を乗せ横たわると、目を閉じた。
「先生?」
「充電、させて」
「充電って……」
スマホをスタンドに置いて充電する光景が頭に浮かび、思わず吹き出す。
でも、こんなことで充電できるのなら、いつでも貸してあげたい。
彼はそれきり黙ってしまった。
ただ規則正しく繰り返される呼吸音だけが、静かな廊下に響き渡っていた。