溺愛ドクターは恋情を止められない
就業時間が近づくと、高原先生が救急にやってきた。
彼はあのあと、丁度三分くらいで目を開き「充電完了!」と言いながら立ち上がった。
私は、元気を取り戻した彼とは対照的に、本当に電気を分けてしまったかのように、ヘトヘトになっていた。
彼との距離が近すぎて、いつもよりずっと心拍が上がってしまっていたから。
「よろしく。って、松浦は終わりか」
疲れ切って、私の膝の上で目を閉じていた彼とは別人のように、背筋がピンと伸びている。
「高原先生、もしかして夜勤ですか?」
「そうだけど」
当たり前の顔をしてサラッと言うけれど、外来にオペに……本当に先生の体が心配になる。
「もしかして心配してくれてる? 大丈夫。充電したから」
あの時の光景を思いだし、耳が熱くなるのを感じた私は、まともに彼の顔を見ることができない。
「外科は小谷か?」
「はい。今、処置室で縫合中です」
先生達も引継ぎだ。
「のぞいてくる」
持っていたカルテを差し出した先生は、少し身をかがめて耳元に口を寄せた。
「さっきは助かった」
ハッとして先生の顔を見上げると、「お疲れ」と処置室に消えていく。
助かった、のかな?
ただ膝枕をしただけなのに。
「松浦さん、引継ぎするわよ」
「はい」