溺愛ドクターは恋情を止められない

夜勤帯の事務員と引継ぎを終えたのは、それから十五分ほどあとだった。


一緒に働いたナースに挨拶をして、更衣室へ向かおうとすると、処置室のドアが開いた。

中から出てきたのは、酒井先生……と高原先生。
同じカルテを覗き込んで、なにか話している。

内藤さんの言っていた通り、まさに美男美女の組み合わせ。


「あっ、松浦さん。お疲れ様」


にっこり微笑む酒井先生。


「お、お疲れ様でした」


なぜかつっかえる私。


「松浦、飲みすぎるなよ?」

「えっ、……飲みませんから!」


思い出させないで!
高原先生のちょっと意地悪な冗談に、思いっきり動揺する私は、酒井先生のように大人になるにはまだ早いらしい。

だけど、酒井先生と仲睦まじい高原先生が、なんとなく遠い人になってしまったような錯覚を覚えて、悲しくなった。
< 73 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop