溺愛ドクターは恋情を止められない
夜勤帯の事務員と引継ぎを終えたのは、それから十五分ほどあとだった。
一緒に働いたナースに挨拶をして、更衣室へ向かおうとすると、処置室のドアが開いた。
中から出てきたのは、酒井先生……と高原先生。
同じカルテを覗き込んで、なにか話している。
内藤さんの言っていた通り、まさに美男美女の組み合わせ。
「あっ、松浦さん。お疲れ様」
にっこり微笑む酒井先生。
「お、お疲れ様でした」
なぜかつっかえる私。
「松浦、飲みすぎるなよ?」
「えっ、……飲みませんから!」
思い出させないで!
高原先生のちょっと意地悪な冗談に、思いっきり動揺する私は、酒井先生のように大人になるにはまだ早いらしい。
だけど、酒井先生と仲睦まじい高原先生が、なんとなく遠い人になってしまったような錯覚を覚えて、悲しくなった。