溺愛ドクターは恋情を止められない
「あれ、さっきまでいたけど」
唇を噛みしめた辛そうな高原先生の顔が頭をよぎる。
もしかして……仮眠室かも。
夜勤の合間に仮眠を取るための部屋で、日勤の間は使われることはない。
彼はこの間、私をあそこで休ませてくれたから。
救急受け入れ要請も出ておらず、仕事がひと段落していることを確認して、仮眠室に向かった。
――トントン
意を決してドアをノックすると「はい」という高原先生の声。
やっぱりここだ。
「失礼します。あの、これ……」
消毒液なんて、処置室に置いておけばいい。
だけど、どうしてもお礼が言いたくて……。
消毒液を差し出すと、ソファに座っていた先生は立ち上がった。
「ありがとう」
先生は私から受け取ると、それを備え付けられた小さなテーブルに置き、しばらく黙り込む。