溺愛ドクターは恋情を止められない

入り口にはナースがすでに待機している。


「交差点で、左折してきたダンプにはねられた模様。意識レベル……」


最初に降りてきた救急隊員が、メモを片手にてきぱきと状況を伝えている。

救急車のドアが開き、ストレッチャーが見えた。

子供だ。
それもまだ小学校低学年くらいの……。
血まみれの――。


「松浦さん、なにやってるの、先生にカルテ渡して」


中川さんの声で我に返る。


「はい」


私は慌てて用意していたカルテとIDを、処置室に持っていく。
すると、初めて見る研修医が、テキパキ指示を出している。


「ライン確保。それとCTの連絡して」


ベッドに横たわる、全身血まみれでビクリとも動かない少女が、誰の目にも瀕死の状態だとわかる。
< 8 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop