溺愛ドクターは恋情を止められない

「ありがとう」

「いえ、私こそ。先生が逃がしてくれたから耐えられました。あっ……」


突然、彼の力強い腕が私を引き寄せ……。


「ちょっと、このままでいさせてくれないか?」


いつの間にかすっぽりと胸の中に収まっていた。
私の耳に、ダイレクトに伝わる先生の鼓動が、すごく速い。

まるで、心が悲鳴を上げているみたい。
先生もきっと、ギリギリのところで仕事をしている。


「医者は常に冷静でなくてはならない。そういう意味では、俺は向いていないのかもしれないな」


沈黙を破ったのは先生の方だった。


「先生……。先生は、素人の私から見ても、無理かもしれないと思う患者さんにも、最後まで手を尽くされますよね」


とても失礼な発言かもしれない。
医療の世界に首を突っ込んだばかりの私が、こんな偉そうなこと。

でも……どうしても言いたい。
< 81 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop