溺愛ドクターは恋情を止められない
「ありがとう」
「いえ、私こそ。先生が逃がしてくれたから耐えられました。あっ……」
突然、彼の力強い腕が私を引き寄せ……。
「ちょっと、このままでいさせてくれないか?」
いつの間にかすっぽりと胸の中に収まっていた。
私の耳に、ダイレクトに伝わる先生の鼓動が、すごく速い。
まるで、心が悲鳴を上げているみたい。
先生もきっと、ギリギリのところで仕事をしている。
「医者は常に冷静でなくてはならない。そういう意味では、俺は向いていないのかもしれないな」
沈黙を破ったのは先生の方だった。
「先生……。先生は、素人の私から見ても、無理かもしれないと思う患者さんにも、最後まで手を尽くされますよね」
とても失礼な発言かもしれない。
医療の世界に首を突っ込んだばかりの私が、こんな偉そうなこと。
でも……どうしても言いたい。