溺愛ドクターは恋情を止められない
「それはお医者様として当たり前なことかもしれないですけど、"死"に慣れてしまったお医者様では、あそこまではできないと思うんです。きっと、途中で諦めると思います」
彼は私を抱きしめ続け、離そうとしない。
間近で感じる彼の息づかいに、胸が高鳴る。
「私がもし、生死をさまよう様なことがあったら、高原先生に診てほしいです。先生なら助けてくれる気がする……」
やっと緩められた腕から逃れると、優しく微笑む先生の顔。
「最高の褒め言葉だな。ありがとう、松浦。松浦には助けられてばかりだ」
『助けられた』だなんて。
私は、なにもしていない。
むしろ助けてもらっているのは、私の方。
その時、再び救急のコールが鳴り響き、同時に先生のPHSも震えだした。