溺愛ドクターは恋情を止められない
同じ痛み
病院を出ると、最寄駅に向かって走り出した。
今は誰とも話したくない。
病院から帰宅する人達が一斉に来る前に、電車に乗ってしまいたかった。
改札を駆け抜けて、閉まりそうなドアすれすれに電車に飛び乗ると、はぁはぁと息が上がっていた。
そこから三つ目の駅が近づくと、高原先生の顔が浮かんで消えない。
ここは彼のマンションの近くだから。
気がつけば、電車を降りていた。
そして、緩やかな坂道を一歩一歩踏みしめるように上っていく。
この先には先生のマンションが……。
やがて八階建てのマンションが見えると、ハッとした。
私……なにしてるんだろう。
私が先生の気を紛らわせるなんて、できるわけないのに。
チラッと駐車場に目をやると、もう先生の車が停まっていた。
今日はあのまま帰れたようだ。