溺愛ドクターは恋情を止められない
「受付、ID貸して。それから外科と整形の先生にコールするよう、師長に」
「はい」
本当は……血だらけの子供を見て倒れそうだった。
でも、血が怖いなんて言ってはいられない。
あの子は、必死に頑張っているんだ。
処置室を出て、外科と整形のドクターを呼んでもらえるように師長に伝えると、程なくして他の先生が駆けつけた。
「ちょっとまずいな」
なにやら薬剤の名前が飛び交い、心電図のモニターの音が響く。
『ピー』
心電図の音が変わった。
それは、ここに来て、何度か経験した音だった。
その音の変化が示すものは――。
一瞬にして緊張が走る。
「高原(たかはら)、心マ! ボスミン!」
さっき処置室に入って行った外科の先生の声がする。
さっきの小さな子の姿を思い浮かべると、体が勝手に震えてくる。