【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
『残務整理が終わるまでは、少し忙しくなる。帰宅も遅くなるから、先に休みなさい』
父は、そう言い残して、戦場だろう会社に向かった。
食卓には、ほとんど口が付けられなかったコーヒーと、全然口が付けられなかった朝食のトーストとハムエッグが残された。
それを眺めつつ、特大のため息を一つはき出す。
はぁ……。
朝は必ず完食! な人の私も、さすがに今朝は箸が進まなかった。
大学のこと。
家のこと。
考えなきゃいけないことも、やらなきゃいけないことも山とあるのだ。
食欲なんか、わくはずがない。
だけど。
「こんなときこそ、食べなきゃ! だよね。亀子さん」
壁際のサイドボードの上に設置された九十センチ水槽の中で、訳知り顔の大きなミドリガメが、私の掛けた声に反応して『にょーん』と、首を伸ばした。