【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「電話を代わりました、私、不動と申します」
『不動……さん?』
訝しげな父の声が、漏れ聞こえてくる。
「はい。不動祐一郎です。お久しぶりです、篠原さん」
――お久しぶり?
思わぬ話の成り行きに、わけが分からず、目を瞬かせる。
「十二年前まで隣に住んでいた、不動咲子の息子です。私のことを、覚えておられますか?」
――十二年前まで、隣りに、住んでいた?
不動咲子さんの、息子さん?
って、ええっ!?
十二年前って言ったら、私は、八歳。
遠い記憶の引き出しを開ければ、鮮やかによみがえる日々。
あのころまだ母は健在で、お隣のおばさんと、とても仲が良かった。
家の隣に建っていた、一戸建ての平屋の賃貸アパート。
そこに住んでいたのは、線が細くて綺麗で儚げな、お隣のおばさん『咲子さん』。
そして、おばさんによく似た面差しの、優しいメガネの兄さん。