【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】


「すみません、お願いします」

その時、わずかに触れた指先に走ったひんやりとした感触にドキリとして、反射的に手をひっこめた。

そんな私の反応に社長は無言で眉根を寄せただけで言葉は発せず、慣れた様子で車の運転席に体を滑り込ませる。

私サイズに狭くなっている座席の位置を調整しているその表情は、少し、不機嫌そう。

――気を悪くしちゃったかな?

別に、手が触れたのが嫌だったわけじゃない。

予想外のひんやりとした感触に、ちょっと驚いただけなんだけど。

ここは、フォローをしとかなきゃと、

助手席にちんまりと収まった私は、シートベルトをしながら社長に話しかけた。

「社長って手が冷たいって言われませんか? 熱が出たときとか、額に乗せたら気持ちよさそうですよね」

冷たい手にもそれなりの活用法はあるはずと、少しでもポジィティブな方に話題を展開しようとした私の試みは、殺伐としたその場の空気を意外な方へ変えた。

「……さっきから、赤い顔をしていると思えば、熱があるのか?」

言葉ににじむのは、心配そうな、気づかわしげな響き。


< 205 / 439 >

この作品をシェア

pagetop