【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「すみません、お願いします」
その時、わずかに触れた指先に走ったひんやりとした感触にドキリとして、反射的に手をひっこめた。
そんな私の反応に社長は無言で眉根を寄せただけで言葉は発せず、慣れた様子で車の運転席に体を滑り込ませる。
私サイズに狭くなっている座席の位置を調整しているその表情は、少し、不機嫌そう。
――気を悪くしちゃったかな?
別に、手が触れたのが嫌だったわけじゃない。
予想外のひんやりとした感触に、ちょっと驚いただけなんだけど。
ここは、フォローをしとかなきゃと、
助手席にちんまりと収まった私は、シートベルトをしながら社長に話しかけた。
「社長って手が冷たいって言われませんか? 熱が出たときとか、額に乗せたら気持ちよさそうですよね」
冷たい手にもそれなりの活用法はあるはずと、少しでもポジィティブな方に話題を展開しようとした私の試みは、殺伐としたその場の空気を意外な方へ変えた。
「……さっきから、赤い顔をしていると思えば、熱があるのか?」
言葉ににじむのは、心配そうな、気づかわしげな響き。