【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「おじさん、今のセーフだよね?」
祐兄ちゃんはニコニコ笑顔で、お店のオジサンにカップの中に入った子亀を掲げてみせた。
「ああ、セーフだよ」
カラカラと豪快に笑った後、オジサンは『でもなぁ』と、少し眉根を寄せて言いよどむ。
「その亀はちっと元気がないから、育たんかもしれんなぁ。元気なのとかえてやっから、好きなのを選んでいいぞ、嬢ちゃん」
「え……?」
『元気がないから育たない』
幼いながら、私は、その言葉の意味をなんとなく悟った。
でも。
きっと、そんなことない。
この子は、ぜったい、元気に大きくなる。
そんな、脈絡のない自信が、湧いてくる。
私は、祐兄ちゃんの持つカップの中で、こちらを見上げて来る小さな亀と見つめ合った。
つぶらな瞳は、『私を連れていって』、そう訴えている気がした。
出会いに『運命』というものがあるのなら、たぶん、これはまさしく『運命』に違いない。
「ううん、私、この子がいい!」
そしてそのとき、私はすでにこの亀さんの名前を決めていた。