【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
子供のころもクルクルと表情が良く動く女の子だったが、そのまま純粋培養したようなその反応に、思わず笑いそうになって口元を引き締め、努めて冷静に対応を心がける。
茉莉は、俺がお隣に住んでいた「祐兄ちゃん」だとは知らないし、知らせるつもりもない。
あくまで、私情を挟まずに雇用主として対応しようと決めていた。
「じゃあ、こちらへどうぞ。履歴書は持ってきましたか?」
「あ、はいっ!」
くるりと踵を返して部屋の中に入れば、茉莉は後ろから慌ててついてくる。
まるで、お隣に住んでいたころに戻ったみたいな錯覚を覚えて、思わず苦笑い。
――子供と動物には勝てないというが、面接をする前からほだされてどうするよ、俺。
「どうぞ、お座り下さい。私が面接をします、不動です」
「篠原茉莉です! よろしくお願いします!」
社長室兼応接室のソファーに座るように促せば、茉莉はきちんと視線を合わせてから、元気いっぱいのあいさつを返してきた。
あいさつは、社会人として必要な最低限のマナーだ。茉莉のあいさつは、口先だけではなく心からの言葉だと感じられる。うちのような接客業には、必要な資質だ。
――まずは、第一段階クリアだな。
俺は、心の中で茉莉の面接チェックシートに、最初の合格スタンプを押した。