【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
一万円をじっと見つめて何やら考え込んでいた茉莉は、
「あ、おつり、四百円ですよね。ちょっと待って下さい、今、出しますから」といって、肩にかけていたバッグをごそごそと探りだした。
何を考え込んでいるのかと思ったら、自給の計算をしていたらしい。
守と顔を見合わせ、俺は思わず苦笑をうかべる。
――なんともはや、律義というか、馬鹿正直というか。
俺たちの反応に、茉莉は自分が計算間違いをしたと思ったのだろう、今度は指折り数えて計算をしだした。
そのようすを見ていた守が耐えられないと言うように『プッ』と吹き出して、クスクスと笑いだした。
「それが、今日のアルバイト料ってこと。だから、おつりはいらないんだよ。ね、社長?」
「ああ」
守につられて口元が緩みそうになるのを必死で押さえて、俺は頷いた。
「え? そうなんですか!? あの、その、ありがとうございます……」
一万円入りの茶封筒を『ははーっ』と捧げ持ち、茉莉はペコリと頭をさげる。
どうやらこれで、茉莉の長い面接日は無事に終わりを告げそうだ。
まあ、俺にとっては笑劇の面接日だったが。
と今日の愉快な出来事に思いをはせていたら、茉莉のバッグの中で、スマホがいきなり鳴りだした。