【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
マナーモードの低い振動音が、急かすように鳴りひびく。
「あ、すみませんっ」
俺と守にペコリと頭を下げてスマホの画面に視線を走らせた茉莉は、表示されている文字を確認して、ぎょっとした表情をうかべる。
「あっ……」
――しまった。
と、その顔には書いてあった。
「どうかしたの?」
と、守が問えば、
「え、あの、父に連絡するのを、ついうっかり忘れちゃって……」
と、茉莉は語尾を濁した。
今度は俺が『しまった』と思った。
成人しているとはいえ、茉莉はまだ二十歳になったばかりの女の子。
深夜まで働いてもらうなら、家族への連絡を促しておくべきだった。
これは、俺の配慮不足だ。
「え? 連絡してないの?」
守の問いに、茉莉は「はい」と引きつり笑いを浮かべながら、スマホを耳に当てる。
次の瞬間、
『茉莉!? 大丈夫か!? 今どこにいるんだ!?』
漏れてきたのは、焦ったような男性の声。
おそらく、茉莉の父親、篠原徳太郎さんだろう。