【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「あ、お父さん、大丈夫だよ。ゴメンね、連絡が遅くなって――」
『こんな時間まで連絡もなしで帰らないなんて、心配するだろう!?』
「うん。ゴメンね、実は……」
凄い剣幕でまくし立てる父親に、しどろもどろの説明を始めた茉莉の手から、俺はひょいとスマホを取り上げた。
これは、雇用主としての俺の責任だ。
きっちりと、筋を通さなくては。
「社、社長?」
驚いている茉莉を視線で制して、俺は、コホンと一つ咳払いをしてから口を開いた。
「電話を代わりました、私、不動と申します」
『不動……さん?』
ああ、やっぱり、篠原徳太郎さん、『クマさんみたいなお隣のおじさん』の声だ。
訝しげな男性の声を聞いて、懐かしさがこみあげてくる。
「はい。不動祐一郎です。お久しぶりです、篠原さん」
思わぬ話の成り行きに、わけが分からず、茉莉は目を瞬かせている。
「十二年前まで隣に住んでいた、不動咲子の息子です。私のことを、覚えておられますか?」