【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「今日は面接だけの予定だったんですが、急きょ人員を確保しなければならなくなり、茉莉さんに助っ人をお願いしたんです」
淡々と、そしてよどみなく、俺は事の経緯を説明していく。
「きちんと連絡を差し上げるべきでした。こちらの配慮が足らずに、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
スマホを片手に、電話の向こう側の徳太郎さんに頭を下げる。
そんな俺の姿を、茉莉は驚きの眼差しで見つめている。
無理もない。
俺が、『お隣の祐兄ちゃん』だとバレてしまったのだから。
知らせる予定ではなかったが、事情が事情だから仕方がないだろう。
『……そうでしたか。経緯はわかりました。こちらこそ娘を雇っていただいて、ありがとうございます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします』
「どうそ、ご心配なく」
『娘に、代わってもらえますか?』
「わかりました」
はい、と、スマホを差しせば、茉莉は神妙な表情でぺこりと頭を下げて受け取る。
「お父さん、心配かけて、ゴメンね……」
心底申し訳なさそうに茉莉が言えば、さっきの剣幕はどこへやら、穏やかな声がスマホから響いてきた。
『事情は分かったから、気を付けて帰ってきなさい。慌てないでいいからな……』
あまりに優しい響きに感じるものがあったのだろう、茉莉は瞳をうるうると潤ませる。
「うん。わかった。じゃあね」
ぷちり、と通話を切れば、その場には沈黙が落ちた。