【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
俺の説明に、やっと自分の行動がどれだけ危険だったか思い至ったのだろう。茉莉は顔をボッと上気させた。
そのまま、うるうると瞳を潤ませている。
なかなかに愉快な反応でもう少し見ていたい気もするが、泣かれるのは困るから俺は緩んでいた抱擁を静かに解いた。
茉莉は、ずりずりずりと体を後ろにずり下げ、身体を縮めてぺこりと頭を下げる。
「す、すみませぇん……ありがとうございます」
「ケガがないなら、かまわない。コーヒーなら冷蔵庫に入っているから、それでいい」
「冷……蔵庫?」
ヨロリと立ち上がり、茉莉は、部屋の隅に設置されている大型冷蔵庫の扉をパカリと開けて目を丸めた。
その中には、缶コーヒーがずらりと並んでいる。
無糖に微糖に、まったりカフェオレ。
缶コーヒーの見本市のような冷蔵庫内の様子に、茉莉は点目になって聞いてきた。
「もしかして、社長って、缶コーヒーマニアなんですか?」
「そんなワケあるか」
身長の関係上、俺は茉莉の上から冷蔵庫を覗きこんで、ボソリと言う。
「確かに俺も飲むが、ほとんどは来客用だ」
「ですよねぇ。あ、でも、お砂糖が入ってるのは飲みすぎると、身体によくないですよ。家も父が甘党でついつい飲みすぎるので、缶コーヒー禁止令をだしてるんです」
おどけたような茉莉の言葉に、ほのぼのとした親子の日ごろのやり取りの様子が目に浮かんで、思わず頬の筋肉がゆるむ。
「俺は、ブラックしか飲まないから、別に問題ない」
「そうなんですか?」
茉莉は、うーんとうなりながら、渋面を作っている。
どうやら、茉莉も親父さんと一緒で甘党のようだ。