【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
あわれみのような同情をされて喜ぶ人間はいないはずだ。
この男の言ってることは、相手に対する優しさでもなんでもない。
優越感に浸りたいだけの自己満足だ。
そもそも相手の女と二人で徒党を組んで、一人の女の子に対峙するその根性が気にくわない。
「……指輪は、宅配でお送りします」
揺れる声音に、女の子の悲しみや苦しみが如実に表れている。
ガタリと席を立って足早に店の外に向かっていく彼女の小さな背中を、なんとも言えない気持ちで見送っていると、薫にグイッと腕を引かれた。
「祐一郎、ぼーっとしてないで、彼女の後追うわよ」
隣の席の二人に聞こえないよう耳元に落とされた薫の囁きに、少なからず驚いた俺は間抜けな声をあげた。
「……え?」
「大事なお客様を、あんな状態でほっとけないでしょ!」
ああ、磯部薫は、こういう女だった。
ホテルロイヤルの常駐医師としての使命感に燃えた元妻にひっぱられるように席を立った俺は、女の子の後を追った。
女の子は、エレベーターには乗らずに一目散に同じフロアにある女子トイレに駆けこんだ。