【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
向かい側にチョコンと座る茉莉に湯気の上がったコーヒーカップと、角砂糖とミルクを差し出せば、茉莉は香ばしい匂いをたっぷり堪能してから、ブラックのまま一口、口に含んだ。
目を細めてニッコリ微笑むその顔には、『おいしい』と書いてある。
「おいしいです」
茉莉の素直な賛辞の言葉に、俺は苦笑を浮かべた。
「無理しないで、砂糖入れたら? ミルクもあるし」
「私だってブラックコーヒーくらい飲めるんですよ。一応、二十歳を超えた大人なので」
心外だな。
そんな表情で、茉莉は心持ち口をとがらせる。
――やはり、俺は茉莉が欲しい。
秘書としての篠原茉莉が欲しい。
ならば、俺も腹をくくるしかない。
まずは、一線を引いていた今までとは違う、素の俺を知ってもらおう。
壁に隔てられたままでは分かり合えないし、信頼も得られない。
そう決意した俺は、茉莉の言葉を鼻先で笑った。
「ふーん、大人ねぇ」
不遜ともとれる声の響きに、コーヒーカップを持つ茉莉の手の動きが、ぴたりと止まる。