【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
ゆったりとコーヒーカップを口に運ぶ俺の動きを、茉莉は金縛り状態で動きを止めたまま、呆然と目で追う。
優雅な所作でカチャリとコーヒーカップをテーブルに置いた俺は、ソファーに深く背を預け、つまり、ふんぞり返って手足を組むとニッコリと口の端を上げた。
不敵に笑んで、銀縁メガネ越しに、射抜くように真っ直ぐ茉莉を視界に捉える。
刹那、背筋に戦慄が走ったように、茉莉は息を飲む。
まるで、狩人が獲物に狙いを定めた瞬間のような緊張感が、その場に満ちた。
「社……長?」
俺は茉莉が知っているお隣に住んでいた頃の『祐兄ちゃん』ではない。
良くも悪くも、世間の荒波って奴にさらされたおかげで変わった、不動祐一郎という企業経営者だ。
まずは、俺という人間を知って受け入れられるか。
試させてもらうぞ。
「途中で逃げ出すかと思っていたが、一カ月持ちこたえたことは、ほめてやるよ」
「……はい?」