【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「しっかし、見事に、中身は子供の頃のまんまだな、お前」
愉悦を纏い俺は低い声で言うと、喉の奥で笑った。
茉莉は、まだこの事態を理解できないように、茫然としている。
「え……、あ、あの、社長?」
「めでたく正社員となったことだし、ここからは手加減なしで行くから、そのつもりでな」
息をのんで俺の言葉を聞いていた茉莉は、俺の変わりように、かなりショックを受けたようだった。
次に、「裏切られた」というかのように、悲し気な表情を浮かべた。
――また、泣くのか?
そう諦めに似た感想を抱いた瞬間、茉莉の瞳にひらめいたのは、確かに憤りの色だった。
「……不動明王」
茉莉がもらした感情を抑えた低い呟きに、俺はあくまで面白そうに片眉を上げる。
「ん?」
「私が付けた、社長のニックネームです」
「へぇ。不動明王ねぇ。焔を背負う阿修羅のことか。良いネーミングセンスをしてるじゃないか。そんなにカッコイイか俺は?」
煽る俺の言葉には答えず、茉莉はカップに残ったブラックコーヒーを、グビグビと一気に飲み干し無言で立ち上がった。