【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「ごちそうさまでした。それでは、お先に失礼します」
これでもかと丁寧に腰を折って挨拶をして、茉莉はくるりと出口のドアへと足を向ける。
その背に、俺は迷わず声をかけた。
「明日は、外回りをするから、スーツで来るように」
「え……?」
きょとりと目を見開いた茉莉は、意味が分からないというように小首をかしげる。
「スーツで、外回りの、お掃除をするんですか?」
その問いに、俺は、呆れたように口の端を上げた。
「そんなワケあるか」
さぞかし意地悪く聞こえるのだろう、茉莉の瞳にまた憤りの色がひらめく。
「明日の夜は、スポンサーと会食がある」
「……はあ」
「はあ、じゃない。お前も一緒に行くんだよ」
「……えっ!? 私、ルームメイクで雇われたんじゃ……」
「誰も、そんなことは言ってないと思うが?」
「え、だって……」
茉莉は絶句したように口ごもった。
茉莉にしてみれば、一生懸命仕事の段取りを覚えて、ようやく慣れてきたところだ。
――不服なら、どう不服なのか言ってみろ。そして、俺を納得させろ。
そうすれば、お前の言い分を聞いてやる。
「仕事の内容を決めるのは、俺だ。とにかく、明日からはルームメイクのローテーションには入らなくていいから」
だが、茉莉は言い返さない。
自分が、否をいう立場にないことを分かっているから、何も言わないのだろう。