【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
従業員通路を抜けて駐車場に出ると、一番奥まった場所にあるガレージの前で、俺は足を止めた。
ガラガラと重い音を響かせて自動シャッターが開けば、姿を現したのは俺の愛車、シルバーメタリックの国産セダン。
斜め後方で物珍しそうに車を見ていた茉莉に向かって、俺は車の鍵をぽん、と投げ渡した。
「ほら、鍵」
不意打ちの攻撃に泡を食った茉莉は、猫じゃらしに飛び付く猫みたいに、ほとんど脊髄反射で鍵をナイスキャッチ。
手のひらの中に納まった、銀の鍵を見つめてしばし呆然と固まる。
「……え?」
なにこれ? 的な顔をする茉莉に俺は事実を教えてやる。
「だから、車の鍵だよ」
「それは分かってますけど。あの、この車の運転って……」
おそるおそるの体でお伺いを立ててくる茉莉に、俺は硬質の眼差しを向けた。
「一般常識的に考えれば分かるだろうが、どこの世界に、社員の運転手をする社長がいるんだ?」
ごく当たり前のことを言っただけだが、茉莉は、頬の筋肉を盛大にひきつらせた。
「あの、大変申し上げにくいんですが、私、まだピカピカの若葉マーク……」
ごにょごにょごにょと、語尾が情けなく口の中に消える。