【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
カーオディオから響いてくるBGMは、やたらと高音質の女性ボーカルが歌う、軽快な洋楽ポップス。
「まずは国道を左に出て、市街地に」
「は、はいっ」
道順を支持すれば、茉莉はハンドルをぎゅっと握りこんで大きくうなずく。
――いや、そんなに緊張しなくても。あんまり力みすぎると疲れるぞ。
と、やや教習所の教官めいた気分で眺めていたら、いきなり車が急発進して体が椅子に沈み込んだ。
ヒヤリ、として反射的にサイドブレーキに手を伸ばしかけた次の瞬間、今度は急ブレーキで体が前に振られたあと反動でまた椅子に沈み込んだ。
結果、駐車場を出る前に車は止まってしまった。
――正直、かなりあせった。
運転を変わってやりたい衝動にかられるが、それではいつまでたってもこの車を運転できるようにならない。ここは、心を鬼にしなければ。
いや、社用車として軽自動車を一台入れた方が安心か?
「……」
無言で、腕組みをしたまま考えを巡らせていれば、茉莉は俺の方に恐怖で引きつる笑顔を向けてきた。