【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「……すみません、気を付けます」
しゅん、と肩を落とした茉莉は、気をとりなおして今度は慎重に車をスタートさせた。
何事もやってみなければ、身につかない。
俺だって、会社経営者として手探りでここまでやってきた。
何事も一生懸命に取り組む茉莉なら、できないことなどないはずだ。
とは思ったが、やはりふだん軽自動車の運転しかしてこなかった茉莉にとって、大型セダンの運転はかなり神経をすり減らすものだったようだ。
ホテルを出てから三十分後。
目的地の駐車場に無事車を止めおえた茉莉は、特大の安堵のため息をついて、ハンドルに突っ伏した。
少し休ませてやりたいところだが、そうもいかない。
「時間がないから、急げ」
茉莉に声をかけて、先に車を降りた俺は目的地へと足を向ける。
「あ、はい!」
慌てた様子でシートベルトを外し、車を降りた茉莉はふらりとボンネットに両手をついた。
「何をしている?」
「すみません、なんでもないです」
つまづきでもしたのかと歩みよろうとした俺の目の前で、茉莉は慌てて歩き出そうとした。
次の瞬間、
――あ。
っと思う間もなく、
茉莉の膝はがっくりと下に落ち、その体は盛大に前方につんのめった。