【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「それじゃ、歯みがきを……」
と言いかけて、はたと思い至った。
なんで、思いつかなかったんだろう。
「歯ブラシは自分の部屋にあるから」と言って自分の部屋に戻ればいいんだ。
ルームシェアをするにしても一度は自分の部屋へ戻るんだから、今戻って悪い道理がない。
うん、そうだ、そうしよう。
うだうだ考えをまとめているうちに、いつの間にか洗面所へ連れてこられた私は、広い洗面台の前にストンと下ろされた。
「あの、社……、祐一郎さん」
頭でまとめた作戦を遂行するべく口を開きかけたその時。
「ほい」
祐一郎さんは、洗面台の引き出しから新品の歯ブラシセットを取り出して私に差し出した。
携帯用のコップと歯みがき粉がセットされた歯ブラシセットだ。
文句のつけようがない。
私はすごすごと尻尾を丸めて携帯コップに水を入れると、敗北感に打ちひしがれながら、しゃこしゃこと歯みがきを始めた。