【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
第5章 再びの嵐の向こう側
思いがけない再会
夏から始まった祐一郎さんとのルームシェアという名の同棲は、秋が来た今も順調(?)に、続いていた。
空を埋め尽くしていた入道雲も、いつの間にか薄いイワシ雲に変わりつつある今日この頃。
私の人生のひとつの山だった、十月の大学後期学費の納入も無事にすんだ。
貯金目標額だった九十万円は、私と父の給料からの貯金だけでなんとか間に合った。
目標を達成できた大きな要因のひとつは、居住費と食費を含む生活費がほとんどかからなかったことにある。
社長――、祐一郎さんは「せめて食費は入れさせてください」という私の申し出を「食事を作ってもらっているから必要ない」といって受け取ってはくれなかった。
そのとき、私は悟った。
このルームシェアは、私に貯金の目標額を達成させるための祐一郎さんなりの援助のしかただったのだと。
祐一郎さんからしたら、たぶん九十万円をポンと貸す方が手間がかからなかっただろう。
でも、私がそれをYESと言って受け取らないことを知っていた。
だから、こんな方法を取って助けてくれたのだと思う。
祐一郎さんには、感謝してもしきれない。
と、いうことで。
来年の四月にある大学の前期学費納入額九十万円の貯金を目指して、相変わらず私は、大学とお仕事の二足のわらじ生活に追われていた。
そんな中、再び、嵐の前触れは訪れた。
インフルエンザの猛威という形を借りて――。