【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「不動……? (株)FUDOUの不動社長……?」
その名前に思いあたったのか、高崎さんは目に見えて顔色をなくした。
「ま、まさか、谷田部グループの、あのホテル王の跡継ぎのくせにラブホテルをやってるという酔狂な息子……」
「ご名答。さすがに噂くらいは聞いているか。ホテルロイヤルの社長、谷田部彰成の不肖の息子だ」
そういって、祐一郎さんは自嘲気味に口の端を上げた。
――なんだ。祐一郎さん自身が高崎さんと面識があったのか。世の中狭いなぁ……。
と納得しかけて、今何か祐一郎さんが変なことを言ったような気がした。
『ホテルロイヤルの社長、谷田部彰成の不肖の息子』。
↓
ホテルロイヤルの社長の息子?
↓
祐一郎さんが、谷田部グループのホテル王の御曹司?
「って、ええっ、うそっ!?」
思わずすっとんきょうな声がでたのは私のせいじゃない。
お金持ちだとは思ってたけど、そこまでけた違いのお金持ちだとは。
「なんでそこでお前が驚くんだ?」
『げせない』という風情で祐一郎さんは、軽く眉根にしわを刻む。
「え、だって、あのホテルロイヤルだよ? 天下の谷田部グループの一族だよ? え? じゃあ、美由紀ってホテル王のご令嬢なの!?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「うん。知らなかった」
だって、いつも黒ジャージ愛用でバイト三昧のあの姉御肌の美由紀が、超セレブのお嬢様だなんて想像もしてなかった。
こくこくこくこく赤べこのようにうなずけば、後ろで沈黙を守っていたスマイリー主任が耐えきれないというように『ぶふっ』と噴き出した。
「茉莉ちゃん、ほんっと君って面白い子だよね。みぃちゃんや社長が惚れちゃうのもしかたないか」