【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
――みぃちゃん、って誰ですか?
クエスチョンマークを浮かべた私にきれいなウインクをひとつ投げると、スマイリー主任は、私と祐一郎さんの前に一歩進み出た。
自分よりも上背がある高崎さんの前にしゃんと背筋を伸ばして対峙したスマイリー主任は、二ッコリと営業スマイル全開で口を開く。
「――ということで、あなたは尻尾を巻いてさっさと退散した方がいいんじゃないかな? 虎の尾を踏みつけたのわかってるよね? それとも、本当に警察を呼ぼうか? 婦女暴行でクサイ飯を食べたい? 路頭に迷いたい?」
一分の隙もない笑顔で畳みかけられて、自分に勝ち目がないのを悟ったのか、高崎さんは悔しそうに唇をかみしめている。
「っくっ……」
そして、高崎さんは、自分の荷物をつかむと私には目もくれずに、足早に部屋を出て行く。
――もう、きっと、会うことはないだろう。
会いたくも、ないけど。
ドアの向こうに消えていく背中を皆一同、チベットスナギツネのような表情で見送る。
「じゃあ、きっちり清算してもらうんで、俺はこのままフロントに戻ります。社長と茉莉ちゃんは、この部屋の片づけをお願いします。あ、この後は他の部屋の掃除はでない予定なんで、『ゆっくり、丁寧に』お願いしまーす」
とニコニコ笑顔で一気に言うと、スマイリー主任は、まるでチェシャ猫のような笑みを残して部屋を出て行った。
わがホテルクロスポイントの現在の司令塔は社長にあらず、フロントのスマイリー主任なり。
私と祐一郎さんは、思わず顔を見合わせて苦笑した。