【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
疑問符を顔に貼り付けながら、ニコニコ笑顔のスマイリー主任からクリップ・ボードと四色ボールペンを予備を含めて二本、ありがたく受け取った私は、わけがわからないまま社長室に戻った。
「これでよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
私からクリップ・ボードと四色ボールペンを受け取ると、社長は傍らに置いてあったビジネスバックを開けて、A4の茶封筒と一緒にしまい込んだ。
「悪いがこれを下げてくれるか?」
社長が、ローテーブルの上にある空のコーヒーカップを私の方に寄せる。
「はい、わかりました」
「ありがとう、うまかった」
「は……!?」
突然耳なれない言葉が聞こえて、思わず、手にした空のコーヒーカップを落としそうになった。
な、な、なに!?
今、「ありがとう、うまかった」って言ったよね!?
聞き間違いじゃないよね!?
社長の顔をまじまじと見つめれば、「何をしている。それをかたずけ終わったらいくぞ?」といつも通りの硬質の視線が、銀縁メガネの奥から投げかけられる。
「は、はい。今すぐにっ」
速足でコーヒーカップを給湯室に下げて、さっと洗って洗いカゴに伏せてから社長室に戻ると、黒いビジネスバックを持った社長はもう準備万端で待ち構えていた。
「それじゃ、行くぞ」
心なしか社長の表情が楽し気に見えて、私もちょっと楽しい気持ちになってくる。どこで何をするのかは分からないけど、一生懸命頑張るだけだ。
「はい!」
私は元気に返事をして、社長室を出ていくその広い背中を追った。