【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
いつも通り私が運転手をしようとしたら「今日は俺が運転する」といって、珍しく社長がハンドルを握ってくれた。
よほどお気に入りなのか、本日も社長の愛車兼、社用車・シルバーメタリックの高級セダンのカーオーディオから流れてくるのは、いつもの外国人女性が歌う洋楽ポップス。
聞きなれた音楽を聴くともなしに聞きながら、私は運転手の社長の横顔に視線を走らせる。
今にも鼻歌を歌い出しそうなくらいに、ご機嫌さんな表情に見えた。
さっきの「ありがとう、うまかった」にも驚かされたけど、なんだかいつもと違って妙に優しい気がする。
どういう風の吹き回し? うーん。分からない。
どうやら市街地の方へ向かっているみたいだ。徐々にまばらだった建物が増えてきて、傾きかけた夕日を浴びた街並は、夜の準備をしているのか妙な活気にあふれている。
「スマイリー主任が『敵情視察にいくんだろう』って言ってましたけど、いったいどこに行くんですか?」
今から自分がどこで何をするのか把握しておこうと、運転席でハンドルを握る社長に質問をすれば、社長は「どこだと思う?」と、質問に質問で切り返してきた。
「ええっと、会社の敵ってことは……」
ラブホテルの敵は、たぶんラブホテルの営業の妨げになる何か。
それか、営業成績に響く何か――。
「繁盛している他のラブホテル……ですか?」
「正解。なかなか知恵がついてきたじゃないか」