【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
「っ……」
喉の奥から込み上げる嗚咽が、狭いトイレの個室に響く。
泣くまいと思うのに。
涙は止めどなく溢れ出して、上気した頬の熱を奪いながら、膝の上でギュっと握りしめた手の甲にポタポタとしたたり落ちた。
『初めまして、高崎です。篠原社長に、こんな可愛らしいお嬢さんがいたんですね』
父の会社に届け物をしに行ったとき、偶然出会った担当だと言う銀行マンは、そう言って優しそうな笑みを浮かべた。
『君のお父さんは、凄い人だね。尊敬に値する人物だよ』
父を真剣に褒めてくれるのが、嬉しかった。
『今度、食事でもしませんか?』
初めてデートに誘われた日は、天にも昇る気持ちだった。
『結婚を前提に付き合ってくれませんか?』
どんどん近くなる距離に、いつか結ばれる日が来るのを信じて疑わなかった。
初めての、恋。
実ると信じていた、恋。
それがこんなふうに、あっけなく終わりを告げるんなんて……。