【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】
第1章 人生最悪の一日の終わりに、おいしいマフィンを
逃れられない現実
昨夜は、ぜんぜん眠れなかった。
何処でもいつでも寝られる『快眠な人』な私も、さすがに眠ることが出来ないまま、夜が明けてしまった。
――はぁっ、と、
何度目だか分からないため息が、口を突いて出る。
私は、二階の自室のベットの上で、カーテンの隙間からこぼれてくる朝日をぼんやりと見詰めた。
昨日の、見ていられないくらい気落ちした父の姿や、四年前に病気で他界した母のこと。
それに、これからの生活の心配や大学のこと。
脈絡もなく色々なことが心の中を駆けめぐり、とても寝られる状態じゃなかった。
カタン、カタン――。
階下から新聞配達の音が聞こえてきて私は半ば反射的に、のろのろと寝不足で重い体をベットから引き起こした。
たとえ会社が倒産しようが睡眠不足だろうが、世界は回っている。
時間は当たり前に過ぎていくのだ。