戦慄のクオリア
「進めぇー」
「敵は仲間を盾にしてでも進むつもりだ。決して中には入れるな」
グレンの指摘通り、リベレイションは銃弾が飛び交う中を容赦なく進んでいく。味方が倒れても、其れを踏み越えて前進する。
 リベレイションの中にはラスール帝国に負け、逃走したイカルガ王国軍が紛れていた。彼らが身命を賭して前進するのは仲間と国を裏切って、逃げたことによる負い目からくるものからなのかもしれない。
其れが事実であってもラスール帝国側が彼らに同情することはない。此れは戦争で、今は戦乱の時代。弱者に強者を糾弾する資格はない。
強いものが弱いものを支配するのは当然だというのが今の思想なのだ。
「敵が奥まで侵入してきてます。グレン大佐、どうします?」
「リザ、お前は一小隊を連れて裏に回れ。挟み撃ちにする」
「分かりました」
リザと呼ばれた軍服を着た女性は敵の攻撃を警戒しながら廊下を走って行った。其れを目で追った後、グレンは耳につけているピアスに触れた。ピアスは通信機になっている為、部下であるファッグに繋がった。
「ファッグ、収容所の出入り口を固めておいてくれ」

<了解、大佐>

一通り指示を終えた後、グレンは銃を構え、引き金を引いた。天井の低い館内で響く銃声の分だけ、流れる血が増えていく。灰色の壁はあっという間に鮮血に染まった。転がる死体を見てもグレンの心は震えなかった。何も感じない心でグレンは戦況を把握し、指示を出していく。生きる為ではなく、此の戦いに勝つ為に。


 ラ・モールで何とか宇宙に出たスカーレットはruinを探していた。幾つもの星がある宇宙。だけど、夜空のように綺麗なものではなく、闇其のもののような所だった。自分以外、生者が居ない宇宙では本当に孤独で、周りを支配する静寂は今のシュタットのように死者の住む世界にスカーレットは感じた。
「あれか」
ruinを発見したスカーレットは操縦桿を握る手に力が入る。
「さすがに楽には行かせてもらえないか」
ruinの守り人ではないが、リベレイションあるいはエレジア連邦のどちらかが用意したと思われる衛星兵器がruinを囲むように浮いていた。
衛星兵器からビームのようなものが放出された。大分、ラ・モールの扱いに慣れてきたスカーレットは余裕で、敵の攻撃を避け、お返しとばかりにラ・モールが持っている銃を構えさせ、ビームを放射。見事、衛星兵器に命中。衛星兵器は傾き、煙を出している。其れでも構わずに攻撃を仕掛けてくる。
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