戦慄のクオリア
 コックピットにわずかに穴が開き、宇宙が見える。漆黒の闇に呑み込まれないよう気を引き締めながらビームを放出した。
宇宙を震撼させるほどの爆音と爆風が起こり、スカーレットは数メートル後ろに飛ばされた。頭を打ち、衝撃で意識を失った。目が覚めた時、ラ・モールの体勢を整える。活動時間は残り二分。飛ばして、ギリギリ地球に着ける。
 スカーレットは通信ボタンを押した。すると、モニター画面にカルルが映し出された。
「此方、スカーレット。ruinの破壊完了。此れより帰還します」

<はいはい。お疲れ様。帰りを待っているよ。ラ・モールの使い心地を今後の為にも聞かせてね>

「了解しました」
スカーレットは通信を切り、地球に帰還した。


 「ruinがやられただとっ!」
アダーラからラスール帝国が謎の機体を操り、ruinを破壊されたことを聞かされたエレジア連邦の幹部は大騒ぎだ。
「謎の機体というのは、どういうものか情報が取れているのか?」
怒鳴り声で喚き散らしているのはエレジア連邦の国防大臣ヴァールだ。チャームポイントは頭頂部の禿だ。喩えるなら河童の皿というところだ。
「ヴァール大臣、落ち着いて下さい。スラグ局長、何か情報は入っていますか?」
宰相のデルフィーノに話を振られた情報局局長のスラグは生存者がカメラに収めてくれた画像を全員に配布した。
「なんだ、此れは?」
ヴァールの言葉を受け、スラグは説明を続けた。
「人型ロボットの名称はラ・モール」
「ラ・モール?ふざけた名前だな」
外務大臣のクラーケは鼻で笑い飛ばした。
「ラ・モールは単機で宇宙に行き、衛星兵器三機とruinを破壊」
スラグの口から出る情報は笑い事ではすまされるものではなかった。切り札であるruinを破壊され、戦況はエレジア連邦の方が不利になってしまった。
「ラ・モールは一機だけですか?」
デルフィーノの質問にスラグに注目が集まる。其れは、とても重要なことだった。ラ・モールが複数存在すれば、エレジア連邦の敗戦だけではない。此の世界全てがラスール帝国に降伏することになる。
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