戦慄のクオリア
アダーラは機嫌を損ねないように細心の注意を払った。
「書斎におられます」
「そう」
「とても勉強熱心なお方ですね。次期国王として先が楽しみです」
勿論、お世辞だ。だが、イリーナは其のことに気づかない。自慢の息子を褒められ、上機嫌になっている。
「当然よ。あんな何処の馬の骨とも分からない女の子供とは違う。私の子は正当な貴族である私と王の血を引いているのだから」
「確かに王子は気品が溢れていますね」
アダーラは笑っていた。だが、其れは表面上だけだ。目の奥は冷えていた。イリーナは全く気が付いていなかった。だが、傍に居たヤシャルには分かっていた。王妃とリベレイションの幹部であるアダーラの会話に、アダーラの部下でしかないヤシャルが入り込むような礼儀知らずなことはしなかった。
「其れより、計画の方はどうなっているの?」
「順調です。何も問題ありません」
「そう。あなたがそう言うのだからそうなんでしょうね。あなたのおかげでイカルガ王宮をネズミ共から取り戻すのは簡単だったし」
「恐縮です」
「でも、少しやり方が甘いと思いますの」
「と、言いますと?」
「私ね、ネズミは嫌いなのよ。一匹でも残すと、周りに害を撒き散らす。だからこそ、一匹残らず抹殺すべき害虫」
此の親子は。と、アダーラは思った。笑いながら平気で物騒なことを言う。人の命をなんとも思っていないというよりかは、自分以外の生き物に命と心があるとは思ってはいないのだろう。
本当に、此の世界では人の命がゴミのようだとアダーラは再度思った。
「あなたは、そうしたんですか?」
「ええ。所詮はネズミ。居なくなったところで何の問題もないでしょう」
此の場合のネズミは前王妃のマリアと第一王女のレイチェルのことだ。勿論、アダーラがそのことを案じて、質問をしたことはイリーナにも分かっていた。其の上で何の迷いもなく答えるイリーナは口だけではなく、頭の重量も軽い女だとアダーラは思った。
「では、忠告に従わせて頂きます」
アダーラは社交的な笑みを浮かべた。勿論、イリーナの言うことを聞くつもりはない。目的を達成する為には戦力が必要となる。其の戦力を確保する為にもイリーナとアルフォードの存在は必要不可欠。今は、ね。だから、アダーラは好意的な態度だけを示したのだ。
「書斎におられます」
「そう」
「とても勉強熱心なお方ですね。次期国王として先が楽しみです」
勿論、お世辞だ。だが、イリーナは其のことに気づかない。自慢の息子を褒められ、上機嫌になっている。
「当然よ。あんな何処の馬の骨とも分からない女の子供とは違う。私の子は正当な貴族である私と王の血を引いているのだから」
「確かに王子は気品が溢れていますね」
アダーラは笑っていた。だが、其れは表面上だけだ。目の奥は冷えていた。イリーナは全く気が付いていなかった。だが、傍に居たヤシャルには分かっていた。王妃とリベレイションの幹部であるアダーラの会話に、アダーラの部下でしかないヤシャルが入り込むような礼儀知らずなことはしなかった。
「其れより、計画の方はどうなっているの?」
「順調です。何も問題ありません」
「そう。あなたがそう言うのだからそうなんでしょうね。あなたのおかげでイカルガ王宮をネズミ共から取り戻すのは簡単だったし」
「恐縮です」
「でも、少しやり方が甘いと思いますの」
「と、言いますと?」
「私ね、ネズミは嫌いなのよ。一匹でも残すと、周りに害を撒き散らす。だからこそ、一匹残らず抹殺すべき害虫」
此の親子は。と、アダーラは思った。笑いながら平気で物騒なことを言う。人の命をなんとも思っていないというよりかは、自分以外の生き物に命と心があるとは思ってはいないのだろう。
本当に、此の世界では人の命がゴミのようだとアダーラは再度思った。
「あなたは、そうしたんですか?」
「ええ。所詮はネズミ。居なくなったところで何の問題もないでしょう」
此の場合のネズミは前王妃のマリアと第一王女のレイチェルのことだ。勿論、アダーラがそのことを案じて、質問をしたことはイリーナにも分かっていた。其の上で何の迷いもなく答えるイリーナは口だけではなく、頭の重量も軽い女だとアダーラは思った。
「では、忠告に従わせて頂きます」
アダーラは社交的な笑みを浮かべた。勿論、イリーナの言うことを聞くつもりはない。目的を達成する為には戦力が必要となる。其の戦力を確保する為にもイリーナとアルフォードの存在は必要不可欠。今は、ね。だから、アダーラは好意的な態度だけを示したのだ。