戦慄のクオリア
「私はあまり気が長くはないの」
そうだろうな。と、アダーラは思った。見た目からしても気の強い女だと分かる。此の手の女が気長であった試しはない。
「早く、始末してね。頼むわよ、アダーラ」
「承知しました」
アダーラは恭しくイリーナの手を取り、甲にキスをした。イリーナは満足そうにアダーラを見つめた。
地球に降下したラ・モールは海のど真ん中に不時着した。ラ・モールの活動時間はオーバー。スカーレットは通信で助けを呼んだ。
ボロボロのラ・モールは死神というよりは難破船だ。スカーレットはコックピットを開け、ヘルメットを取り、立ち上がった。落ちないように器用にバランスを取って。
「さすがに怒られるかな。此処までボロボロにしたら」
スカーレットはラ・モールを見渡した。コックピットには穴が開き、右足、左手は捥げて、宇宙の藻屑になってしまった。だが、単機で乗り込むしかないのだから、こうなることは想像できるし、ruinと衛星兵器を三機も破壊できたのだからラ・モールの犠牲は無駄ではなかったとスカーレットは自分の都合の良い方に解釈した。
「空が青いな」
助けが来るまですることがないスカーレットは周りに何かないかと辺りを見渡した時に不意に目に入った空を見て、そう思った。空が青いのは当然のことで、いつも目に入っている色ではある。だが、一人で宇宙に出て、漆黒の空を見ると、空の青さに安心する。疾呼の空というのは見ているだけで鬱になる。一人ならとくに。
「やっと来たか」
基地からかなり離れた場所に不時着した為、迎えに来たのは地球に下降してから四〇分後だった。大した時間ではないが、何もない場所で何もすることがない状態で人を待つ時は一分でも一時間に相当する長さに感じられるのだ。
「あ゛ああああー。僕のラ・モールがぁ」
迎えに来たカルルはボロボロのラ・モールを見て、悲痛な叫びをあげた。
「僕の最高傑作がぁ」
カルルはラ・モールに抱きついて、泣いていた。直ぐにラ・モールを海から引き揚げて基地に帰りたい人達はカルルをラ・モールから引き離した。
「僕の最高傑作ぅ」と、泣き続けるカルルを気に留める者は居ない。彼を無視して、ラ・モールを戦艦に上げ、基地に向けて発進した。
基地には一時間たらずで着いた。カルルは直ぐにラ・モールの修理に取り掛かった。テキパキトと指示をし、時折怒号を飛ばしている姿を見ると、カルルにとってラ・モールがとても大切なことだと分かる。
そうだろうな。と、アダーラは思った。見た目からしても気の強い女だと分かる。此の手の女が気長であった試しはない。
「早く、始末してね。頼むわよ、アダーラ」
「承知しました」
アダーラは恭しくイリーナの手を取り、甲にキスをした。イリーナは満足そうにアダーラを見つめた。
地球に降下したラ・モールは海のど真ん中に不時着した。ラ・モールの活動時間はオーバー。スカーレットは通信で助けを呼んだ。
ボロボロのラ・モールは死神というよりは難破船だ。スカーレットはコックピットを開け、ヘルメットを取り、立ち上がった。落ちないように器用にバランスを取って。
「さすがに怒られるかな。此処までボロボロにしたら」
スカーレットはラ・モールを見渡した。コックピットには穴が開き、右足、左手は捥げて、宇宙の藻屑になってしまった。だが、単機で乗り込むしかないのだから、こうなることは想像できるし、ruinと衛星兵器を三機も破壊できたのだからラ・モールの犠牲は無駄ではなかったとスカーレットは自分の都合の良い方に解釈した。
「空が青いな」
助けが来るまですることがないスカーレットは周りに何かないかと辺りを見渡した時に不意に目に入った空を見て、そう思った。空が青いのは当然のことで、いつも目に入っている色ではある。だが、一人で宇宙に出て、漆黒の空を見ると、空の青さに安心する。疾呼の空というのは見ているだけで鬱になる。一人ならとくに。
「やっと来たか」
基地からかなり離れた場所に不時着した為、迎えに来たのは地球に下降してから四〇分後だった。大した時間ではないが、何もない場所で何もすることがない状態で人を待つ時は一分でも一時間に相当する長さに感じられるのだ。
「あ゛ああああー。僕のラ・モールがぁ」
迎えに来たカルルはボロボロのラ・モールを見て、悲痛な叫びをあげた。
「僕の最高傑作がぁ」
カルルはラ・モールに抱きついて、泣いていた。直ぐにラ・モールを海から引き揚げて基地に帰りたい人達はカルルをラ・モールから引き離した。
「僕の最高傑作ぅ」と、泣き続けるカルルを気に留める者は居ない。彼を無視して、ラ・モールを戦艦に上げ、基地に向けて発進した。
基地には一時間たらずで着いた。カルルは直ぐにラ・モールの修理に取り掛かった。テキパキトと指示をし、時折怒号を飛ばしている姿を見ると、カルルにとってラ・モールがとても大切なことだと分かる。