戦慄のクオリア
「ruin破壊の任を命じられた際、グレン大佐からは任務を失敗する責任を負いたくないということで、ラ・モールのパイロットに私が選ばれたと聞いたのですが」
「間違ってはいないわよ。ただ本当のことを言うと不適切者と判断された上司のプライドはズタズタでしょ」
なんて、くだらない連中だろうとスカーレットは呆れすぎて怒ることもできなかった。
「責任を負いたくないってのも、どうかと思いますが。プライド以前の問題でしょう」
「私に言われても困るわ」
「そうですね。すみません。他に何か聞きたいことはありますか?」
「いいえ、もう充分よ」
「そうですか。其れでは、私は下がらせてもらいます」
「ええ。ありがとう」


ヴァイナー歴五九八年 ロスロンの月 第三〇番目 午前一時
ラ・モールの初陣は静かに幕を閉じた。


 私達は戦うことを選んだ。
其れは己の意志ではなく、「戦乱」という時代によって選ばされた運命であると知りながら私達は歩を進める。
平和を、戦いの無い世界を望んではいないわけではない。
だが、当時の私達にとって其れは夢物語でしかなかった。
だから誰も、本気で平和を望んでいる者は居なかった。誰もが夢物語だと諦めていたのだ。
其れが更なる悲劇を生むと知らずに。
無自覚は常に何かを狂わせる要因の一つである。
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