戦慄のクオリア
スカーレットを試すような、彼女の本心を探るような目をグレンは向けてきた。だが、此の質問を想定していたスカーレットに動揺はなかった。
「私には関係のないことです」
グレンは目を細めた。スカーレットの心の奥深くまで覗けるように。
「私はスカーレット・ルーフェン。其れ以外の何者でもありません」
「スカーレット・ルーフェン。緋色を呼ぶ者、か。では、其の名の通り、其の身を鮮血に染め上げろ」
スカーレットは敬礼をした。グレンの用件が終わったことを確認し、スカーレットは部屋を出て行った。気配で其れを察した、隣の部屋で身を隠していた男が代わりにグレンの部屋に入って来た。
「本心、ですかねぇ」
「其れを確かめる為にお前が居るんだろう、エヴァネンス。引き続き、スカーレットの監視を頼む」
「命をかけて此の国を守った戦士の一人。なのに、共に戦う仲間から疑われて、これじゃあ背中を預けられる者なんて、到底作れない。悲しい話ですね」
そう言いながらもエヴァネンスの顔や口調に悲しみの色を宿してはいない。眼球から放たれる鋭い光は獲物を逃がさない鷹そのもの。
逆三日月の形をした唇は嘲笑が滲んでいた。彼はスカーレットのことをただの監視対象としか考えていなかった。自分と同じ感情のある人間だとは考えない。考えないようにしている。もしもの時、ちゃんと殺せるように。
「彼女だってバカじゃない。自分の立場ぐらい理解しているだろう。其れでも此の国に居ることを選んだ。なら覚悟ぐらいできてるだろう」
「・・・・そうですね」
スカーレットが、どんなに命がけで此の国を守っても、彼女の正体を知ったら、彼女を慕っている此の学校の生徒もきっと、彼女の死を願うだろう。人間とは本当にくだらない生き物だ。
「そろそろ授業が始まるので教室に戻ります」
エヴァネンスは敬礼をしてグレンの部屋を出た。喧騒の中をすり抜け、教室に向かうエヴァネンスの目は窓の外に向いていた。外、一階の中庭にはスカーレットが居た。
スカーレットの周りには既に人盛りができていた。其の中にはスカーレットとは違うクラスの生徒も数人居た。男女問わず、スカーレットを囲むようにまるで砂糖に群がる蟻のような連中の壁が其処にはできていた。彼らの嬉しそうな顔を見れば心からスカーレットを好いているのが分かる。スカーレットには人を魅了するカリスマ性がある。其の血筋故か。だったら呪いに等しいなとエヴァネンスは思った。
ずっと見ていたせいか、スカーレットがエヴァネンスの方に視線を向けた。エヴァネンスは慌てて目を逸らした。一瞬、目が合ったような気がして、エヴァネンスは直ぐに其の場を離れた。
「私には関係のないことです」
グレンは目を細めた。スカーレットの心の奥深くまで覗けるように。
「私はスカーレット・ルーフェン。其れ以外の何者でもありません」
「スカーレット・ルーフェン。緋色を呼ぶ者、か。では、其の名の通り、其の身を鮮血に染め上げろ」
スカーレットは敬礼をした。グレンの用件が終わったことを確認し、スカーレットは部屋を出て行った。気配で其れを察した、隣の部屋で身を隠していた男が代わりにグレンの部屋に入って来た。
「本心、ですかねぇ」
「其れを確かめる為にお前が居るんだろう、エヴァネンス。引き続き、スカーレットの監視を頼む」
「命をかけて此の国を守った戦士の一人。なのに、共に戦う仲間から疑われて、これじゃあ背中を預けられる者なんて、到底作れない。悲しい話ですね」
そう言いながらもエヴァネンスの顔や口調に悲しみの色を宿してはいない。眼球から放たれる鋭い光は獲物を逃がさない鷹そのもの。
逆三日月の形をした唇は嘲笑が滲んでいた。彼はスカーレットのことをただの監視対象としか考えていなかった。自分と同じ感情のある人間だとは考えない。考えないようにしている。もしもの時、ちゃんと殺せるように。
「彼女だってバカじゃない。自分の立場ぐらい理解しているだろう。其れでも此の国に居ることを選んだ。なら覚悟ぐらいできてるだろう」
「・・・・そうですね」
スカーレットが、どんなに命がけで此の国を守っても、彼女の正体を知ったら、彼女を慕っている此の学校の生徒もきっと、彼女の死を願うだろう。人間とは本当にくだらない生き物だ。
「そろそろ授業が始まるので教室に戻ります」
エヴァネンスは敬礼をしてグレンの部屋を出た。喧騒の中をすり抜け、教室に向かうエヴァネンスの目は窓の外に向いていた。外、一階の中庭にはスカーレットが居た。
スカーレットの周りには既に人盛りができていた。其の中にはスカーレットとは違うクラスの生徒も数人居た。男女問わず、スカーレットを囲むようにまるで砂糖に群がる蟻のような連中の壁が其処にはできていた。彼らの嬉しそうな顔を見れば心からスカーレットを好いているのが分かる。スカーレットには人を魅了するカリスマ性がある。其の血筋故か。だったら呪いに等しいなとエヴァネンスは思った。
ずっと見ていたせいか、スカーレットがエヴァネンスの方に視線を向けた。エヴァネンスは慌てて目を逸らした。一瞬、目が合ったような気がして、エヴァネンスは直ぐに其の場を離れた。